京都祇園料亭のママが用意した三段重のおせち、粋な計らいに胸がぐっと熱くなる

40歳、独身女性です。20年前にとても思い出深いことがありました。私は北海道出身で、京都の大学に進学していました。貧乏学生だったのでバイトに追われ、お正月も帰省をせずにいろいろな仕事をしていました。当時していたバイトの中に、祇園の小料理屋さんがありました。

生粋の京女のママと、料理人の旦那さんがやっている小さなお店です。ママはさすが京都の人、とてもマナーに厳しく私は怒られてばかり。何せ18歳で北海道から出てきたので、京都らしいしきたりや言葉使いも分からず、仕事もおおざっぱでした。きっと「北海道の子はなんも知らん」と思われていたと思います。

京都の料亭でバイトしていた私は、実家に帰省せず年末もアルバイト

しかし仕事は面白く、厳しい環境ながらに私は何年も働いていました。祇園ということで時給が高いのも魅力でした。そして20歳のお正月、私の年内最後の出勤は30日でした。その日バイトを終えると、ママが「北海道に帰らへんの?」と聞いてきました。

私はそのお正月は、大みそかは伏見稲荷神社での警備のバイトが入っていたため「帰りません」と伝えました。ママはやや眉をひそめ、「ほうなんや、実家は心配してへんの?」と聞いてきました。しかし私はそのとき心の中で「余計なこと聞いてきて…お金持ちには貧乏学生の気持ちなんて分からないくせに」と思ってしまったのです。

その日の帰りがけ、ママから「明日の午後、お店に寄って欲しい」と言われました。その理由は言われませんでした。私はあまり深くは考えず、「わかりました、寄ります」と答えました。翌日の大みそか。私は下宿を軽く掃除し、夜からのバイトに備えて昼ご飯を食べて、自転車でママのお店に向かいました。

京都料亭のママからいただいた三段重のおせち、今でもあのおせちを思い出す

何のために呼ばれたかも知らないままに…。お店に入ると、いつも通り着物をピシッと着たママが待っていました。そして、「これ持って帰り」と、大きな包みを渡されたのです。中はなんと三段のお重に入った京都の本式のおせち料理でした。ママは私に、いろいろと京都のおせちの説明をしてくれました。

クワイやユリ根、金時ニンジンなどは北海道のおせちにはなじみが無い食材だったので、とっても新鮮でした。「あんた、お正月にはお正月らしいことせなあかんで」ママはそう言って、日本酒が好きな私にお酒の一升瓶まで持たせてくれたのでした。

その日の夜は、何だか心が温かく感じました。たくさんの人が初詣にやって来る大みそかの神社で、カイロをたっぷり持ちながらバイトをこなしながらも、「故郷は離れてしまったけれど、いろいろな人に支えられて暮らしているんだな」と思ったのです。おせち料理を食べるたびに、今でも京都のママのことを思い出します。

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